遺産の一部分割

遺産分割・遺留分

相続人間で遺産分割協議をするときに、先に一部の遺産についてのみ分割協議をすることも可能です(民法907条1項)。

例えば、遺産に自宅不動産と預貯金がある場合に、自宅不動産を相続人の一人が代償金を支払って単独取得するか、それとも売却して代金を相続人間で分割取得するかという方針について協議が難航しているものの、預貯金については法定相続分で分割することについて全員が同意しているような場合です。

また相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産全部の分割を申立てることができますが、このとき遺産の一部のみの分割を申立てることもできることが明文化されています(民法907条2項)。このような遺産の一部についての分割申立は、他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合を除いて認められると規定されています。

家庭裁判所で遺産の一部の分割審判ができる要件としては、一部分割の必要性が認められること及び一部分割によって遺産全体の適正な分割が不可能にならないことが必要とされています(大阪高決昭46年12月7日)。このような要件は事案によって個別に判断されますが、例えば遺産に不動産と預貯金があり、不動産の評価額について相続人間に争いがあって解決に長期間を要する場合などはこの要件を満たすと考えられます。

 

 

 

弁護士: 松本政子