相続財産の内容を明らかにしない遺産分割協議の有効性

遺産分割・遺留分

1 はじめに

 遺産分割協議を行うに際し、全ての相続人等が、相続財産についての情報を有しているとは限りません。このコラムでは、相続財産の内容を明らかにしない遺産分割協議の有効性について検討します。

2 遺産分割協議の内容

 遺産分割協議の内容には制限がなく、当事者である相続人等の意思によって自由に定めることができます。従って、全ての相続財産を相続人の一人が相続するといった遺産分割協議も有効であり、相続財産の内容を明らかにする必要はありません。

3 遺産分割協議が錯誤無効とされた判決

 一方で、遺産分割協議についても、意思表示の瑕疵に関する規定が適用されるため、その意思表示に、心裡留保(民法93条)、虚偽表示(民法94条)、錯誤(民法95条)、詐欺・強迫(民法96条)などの瑕疵があった場合には、これらを理由として、遺産分割協議の無効又は取り消しを主張されることがあります。

 実際に、一部の相続人が、遺産分割協議の当時、遺産分割協議書に記載されていない財産(上場株式)の存在を知らなかった等という事情から、当該遺産分割協議は錯誤により無効となると判断された判決(東京地判平成27年4月22日)があります。

4 終わりに

 以上のことから、遺産分割協議を行うにあたり、相続財産の全てを明らかにする必要はないですが、後に紛争が生じないようにするためにも、遺産分割協議時点において判明している相続財産については明らかにし、協議成立後に判明した相続財産の分割方法まで遺産分割協議書に記載することが望ましいでしょう。

弁護士: 斉藤聡子