相続人等から遺言無効主張がなされた場合の遺言執行者のなすべき対応2

遺産分割・遺留分

1 はじめに

本コラムでは別コラム「相続人等から遺言無効主張がなされた場合の遺言執行者のなすべき対応1」に引き続き、遺言執行者の就任後に、共同相続人の一人等から遺言無効の主張がなされた場合における、遺言執行者の対応について解説いたします。

2 遺言執行後に事後的に遺言が無効となった場合の遺言執行者の責任

遺言の有効性は最終的には訴訟により判断されるところ、仮に遺言無効確認訴訟において遺言が無効であると判断されたとしても、遺言執行者による遺言の有効性の検討が十分に行われていた場合は、既になされた遺言執行についての任務懈怠又は不法行為責任を負うことにはならないものと考えられます。

もっとも、遺言執行後に遺言無効が確定した場合、遺言執行者が事実上、相続人等の当事者間の紛争に巻き込まれる可能性はあります。
このようなリスクの回避のためには、遺言執行者において、遺言無効を主張している者に対して、資料を示して遺言が有効であると判断した根拠を説明したうえで、一定期間を区切ってこれに対する無効主張者の意向を求めることが推奨されます。当該期間内に意向が示されない場合には、無効主張者に対し、内容証明郵便等で無効主張を維持する場合には一定期間内に遺言無効確認訴訟等の法的手続を行うべき旨催告をし、法的手続がなされない場合には遺言執行を敢行することが考えられます。

3 遺言無効確認訴訟が提起された場合等における遺言執行者の対応

遺言無効確認訴訟が提起された場合には、同訴訟において遺言の有効性が確定するまで遺言執行を留保することが考えられます。

もっとも、この場合でも、無効主張者以外の相続人や受遺者による遺言執行者としての任務懈怠責任の追及があり得るため、遺言執行者としては、これらの者に対して事前に事情を説明したうえで、遺言執行の留保について同意を得ておくのが推奨されます。

弁護士: 土井將