数次相続と法定相続情報証明制度

遺産分割・遺留分

1 はじめに

 相続登記や預金払戻等の相続に関する手続において、法定相続証明制度が有用であるということについてはこちらのコラムで記載をさせていただいたとおりですが、本コラムでは、いわゆる数次相続(相続発生後に当該相続に関する相続手続が未了のまま当該相続における法定相続人も亡くなってしまった場合)における法定相続情報証明制度の利用(法定相続情報一覧図の作成)について記載をさせていただきます。
 「被相続人Aについての相続手続が未了のままAの相続人であるBも死亡してしまった。CはBの相続人としてAの相続手続を行う。」という場面を想定します。この場合、Cとして、Aの相続手続を行うためには、どのような形で法定相続情報証明制度を利用することができるでしょうか。

2 数次相続の場合はそれぞれの相続について法定相続情報証明制度を利用する

 法定相続情報証明制度は、ある被相続人についての「相続発生時」の法定相続情報を証明するための制度です。したがって、Aを被相続人とする法定相続情報一覧図にはA死亡時の相続人が記載されるので、法定相続情報一覧図の作成時には既にBが死亡していたとしても、Aを被相続人とする法定相続情報一覧図にはAの相続人としてBの名前が記載されます(Cの名前は記載されません。)。
 しかし、これでは、現在はCがAの相続人になっていることは証明されませんので、Cは、別途「Bを被相続人とする法定相続情報一覧図」を作成する必要があります。CはB死亡時の相続人なので「Bを被相続人とする法定相続情報一覧図」にはCの名前は記載されます。そして、Cは、「Aを被相続人とする法定相続情報一覧図」と「Bを被相続人とする法定相続情報一覧図」の2枚で、「現在はCがAの相続人になっていること」を証明してAの相続手続を行うことができるようになります。

3 相続人の相続人であれば自分の名前が記載されなくても法定相続情報一覧図の作成申請が可能

 ここで、「Aを被相続人とする法定相続情報一覧図にはCの名前は出てこないけど、その一覧図の作成申請をCが行うことができるのか。」という疑問が出てきます。この点については、法務局のHPには「本制度を利用することができる方(申出人となることができる方)は,被相続人(お亡くなりになられた方)の相続人(又はその相続人)です。」と明記されておりますので、Cも「被相続人Aの相続人Bの相続人」として、「Aを被相続人とする法定相続情報一覧図」の作成を法務局に申請することが可能です。

弁護士: 相良 遼