養子縁組と意思能力

遺産分割・遺留分

1 はじめに

被相続人が養子縁組を結んでいた場合、相続分ないし遺留分の割合が減少してしまうことから、養子縁組は相続人間の紛争の火種になりえます。
前回の「養子縁組の効力を争われたら」においては、縁組意思の存否に着目して、養子縁組の効力を争われた場合(養子縁組無効確認訴訟など)におけるポイントをご説明いたしましたが、本稿では、養子縁組と意思能力の関係に着目したいと思います。

 

2 養子縁組と意思能力

養子縁組の意思能力について、東京高等裁判所昭和60年5月31日判決は次のように判示しています。

「養子縁組をなすについて求められる意思能力ないし精神機能の程度は、格別高度な内容である必要はなく、親子という親族関係を人為的に設定することの意義を極く常識的に理解しうる程度であれば足りる」

これによれば、養子縁組をなすに必要な意思能力は、贈与や売買などの財産処分に関する法律行為において必要とされる程度までは求められていないと考えられます。

もっとも、その判断においては、通常の意思能力と同様に、当該行為(養子縁組の届出)に至る経緯が重視されることになるでしょう。
岡山地裁倉敷支部平成14年11月12日判決では、①縁組当時の養親の認知症の程度、②養親の養子との交流関係、③当事者間に親子関係を形成する必要性、当事者間の養子縁組の必要性、④養親の財産管理を巡る紛争の有無、養子縁組の結果、養親の推定相続人の相続分への影響の有無、⑤紛争発生の回避のための配慮の有無、⑥養親による養子縁組に重大な利害関係を有する者への相談の有無、養子による縁組の公表の有無、について事実認定した上で、養子縁組の届出当時、養親が身分上および財産上重大な結果を及ぼす本件養子縁組の趣旨をある程度理解し得るだけの認識を有していたかは疑わしいと判示しました。
上記①~⑥の事情は、他の事例においても幅広く参考になるものと考えます。

 

3 おわりに

高齢化社会のいま、養子縁組の有効性が争われる事例においては、縁組意思の存否だけでなく意思能力の存否も検討されることになるでしょう。
いずれの争点も考慮事情が重なるところがあり、その意味でも上記①~⑥の事情は重要です。
養子縁組と相続に関してお悩みのことがあれば、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士: 森遼太郎