寄与分について(2)

遺産分割・遺留分

コラム「寄与分について」においては、相続人が被相続人の介護を実施した場合に寄与分が認められるかという点について、判例を紹介いたしました。本コラムでは、相続人が被相続人の経営する会に対する出資が寄与分が認められるかという点について、判例を紹介いたします。

原則として、被相続人の営む会社への出資などは、会社に対する貢献に過ぎず、被相続人の事業に関する財産上の給付とは言えません。したがって、基本的に寄与分であるとは認められません。しかし、例外的に、①会社が実質的には被相続人の個人企業に近く、被相続人と経済的に極めて密接した関係にあり、かつ②会社への貢献と被相続人の資産の確保との間に明確な関連性が認められる場合には寄与分であると認められることがありえます。裁判所もこの点について、以下のように判断しています。

「Aは被相続人が創業した株式会社であって被相続人とは別人格として存在しており、その実質が個人企業とは言いがたい。しかし、被相続人はAから生活の糧を得ており、自己の資産の殆どをAの事業資金の借入の担保に供し、被相続人から恒常的にAに資金援助がなされ、またAの資金が被相続人に流用されたりしている。これらの事情に照らせば、Aは被相続人の個人企業に近い面もあり、またその経営基盤の主要な部分を被相続人の個人資産に負っていたものであって、被相続人がその個人資産を失えばAの経営は危機に陥り、他方Aが倒産すれば被相続人は生活の手段を失うばかりでなく、担保に供している個人資産も失うという関係にあり、Aと被相続人とは経済的に極めて密着した関係にあったものである。そうすると、Aの経営状態、被相続人の資産状況、援助と態様等からみて、Aへの援助と被相続人の資産の確保との間に明確な関連性がある場合には、被相続人に対する寄与と認める余地があるということができる。」(高松高裁平成8年10月4日決定)

寄与分について、お困りの際は弁護士にご相談ください。

弁護士: 田代梨沙子