遺言の内容の変更の方法

遺言作成

1 はじめに

遺言をするには、①自筆証書遺言②公正証書遺言③秘密証書遺言によってする必要があります(民法967条)。その他特別な方法の遺言(民法976条以下)もありますが、原則的にはこの3つの方法により行われます。

遺言を作成した後に、相続させる予定であった方が亡くなった。やっぱりこの人に相続させるものを変えたい。と思われることもあるかと思います。この際に、どのようにして、遺言の内容を変更するのか解説いたします。

2 遺言の撤回の方式

民法1022条「遺言者は、いつでも、遺言の方法に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができる」と定めています。そのため、法律上の方式に従った方式で新たに遺言を作成すれば、以前の遺言は撤回となり、新たに作成した遺言の内容が実現できます。この場合、以前の遺言の方式と同じ方式で作成する必要はありません。

ですので、公正証書遺言を作成した時に、一部だけ変更したいと思った場合には、また公正証書を作成し直さずとも、自筆証書遺言の方式に従っても、遺言の内容の一部だけを変更することができます。ただし、この場合も公正証書で作成した方が、裁判所での検認の手続きを省略できますので、後々手続きが少なくて済みます(民法1004条2項)。

3 遺言の撤回の撤回

では、その後、再度、気が変わって、元の遺言の内容に戻したいときは、どのようにするのでしょうか。

民法1025条は、「前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。」として、原則として遺言の撤回の撤回はできないとしています。

しかし、判例(最判平成9年11月13日)によれば、「遺言(以下「原遺言」という。)を遺言の方式に従って撤回した遺言者が、更に右撤回遺言を遺言の方式に従って撤回した場合において、遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、民法一〇二五条ただし書の法意にかんがみ、遺言者の真意を尊重して原遺言の効力の復活を認めるのが相当」であると判示し、「遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らか」な場合は撤回の撤回を認め、原遺言の復活を認めました。

4 おわりに

このように、遺言については、後で撤回をしたり、復活させることは可能ですが、その記載内容次第で、撤回が認められるのか、または復活が認められるのかといったことに大きく影響いたしますので、大きく紛争化する恐れがあります。

せっかく紛争にならないように作成した遺言が元で、大きな紛争が生まれないように、遺言の内容を変えたいと思われた時には、専門家にご相談することをおすすめいたします。

弁護士: 森下 裕