遺品の整理と相続放棄

遺産分割・遺留分

はじめに

疎遠だった父・母が亡くなった、独身で子どももいない兄弟姉妹が亡くなったと、その方が住んでいた不動産の管理会社から連絡が来ることがあります。

長らく疎遠だったこともあり、相続をする気はないが、遺品の整理はした方がいいのか迷われることもあると思います。

その場合、どのように対処すれば良いのか、解説いたします。

相続放棄後の空き家の管理については、別コラムでご紹介していますので、そちらをご確認ください。

相続放棄する場合

相続をしないようにするには、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に相続放棄をしなければなりません(民法915条)。

相続放棄をすれば、次順位の相続人に相続権が移りますが、相続放棄をしたとしても、「自己の財産におけるのと同一の注意を持って、その財産を保存」しなければなりません(民法940条)。そのため、相続放棄をしたからといって、何もせずに放置しておくと、思わぬ損害が発生してしまうかも知れません。

他方で、相続放棄後、遺品等を整理してしまうと単純承認とみなされ、望まない相続をしてしまうかも知れません(民法921条3号)。

そのため、どこまでしていいのか、さらには、どこまでしないといけないのか悩まれると思います。

相続放棄後の対処については、以下の点に注意して行うことがいいでしょう。

単純承認となる行為

単純承認とされるのは、「相続財産の全部又は一部を処分したとき」(民法921条1号)で、相続放棄後であれば、相続財産を「隠匿し、私(ひそか)にこれを消費し、又は悪意でこれを財産目録中に記載しなかったとき。」(民法921条3号)とされています。

裁判例

原則として遺品は相続財産にあたりますが、裁判例によると民法921条1号の「処分」とは、一般的経済価額のある相続財産の法律上又は事実上の現状・性質を変ずる行為のことであり、一般的経済価額のない物の廃棄はもとより、経済的に重要性を欠く形見分けのような行為は、「処分」には当たらないと解するのが相当であるとされています(東京地裁判決平成21年 9月30日)。同裁判例では、ノートパソコン、ブラウン管式テレビ、全自動洗濯機、DVDプレーヤー、掃除機といった家電製品は、その製造時期や使用状況によっては一般的経済価額があり得るとしており、一定の注意が必要です。

また、別の裁判例は、民法921条3号の「隠匿」とは、相続人が被相続人の債権者等にとって相続財産の全部又は一部について、その所在を不明にする行為をいうと解されるところ、相続人間で遺品を分配するいわゆる形見分けは含まれないものと解すべきとされています(東京地裁平成12年3月21日)。同裁判例では、スーツ、毛皮のコート三着とカシミア製のコート三着、100足あまりの靴、絨毯等一定の財産的価値を有する遺品のほとんどすべてを自宅に持ち帰った行為は、いわゆる形見分けを超えると判断されました。具体的にどの動産が財産的価値を有するのかは示されておりませんが、一般的に毛皮のコートやカシミア製のコートについては、経済的価値があると評価され得るものでしょう。

最後に

以上の通り、相続放棄をする予定の際の遺品整理は、非常に判断が難しいものになります。

ただし、一般的に経済的価値があるからといって、全く処分できないとするのは、さまざまな関係人においても不利になる可能性があります。例えば、大きな機械があり、その保管費用がかかる場合などです。

こういった場合には、「相続財産の隠匿等の行為をした場合には、被相続人の債権者等の利害関係人が相続財産を把握できない等の不利益を被ることになってしまう。そこで、民法九二一条三号は、右のような相続人による被相続人の債権者等に対する背信的行為に関する民法上の一種の制裁として、相続人に単純承認の効果を発生させることとした」(東京地裁平成12年3月21日)いう法の趣旨から、当該動産を売却して換価した金員を分別管理しておき、債権者からの問い合わせに対して、隠匿せずに回答し、相続財産管理人に対して報告し引き継ぐ等などをしておれば、大きな紛争が回避できる可能性があります。

少しでも不安に思われた場合には、弊所にぜひご相談ください。

 

弁護士: 森下 裕