死因贈与と内容が抵触する遺言がある場合

遺言作成

1 はじめに

被相続人が、生前、遺言を作成した後、さらに別の遺言を作成したのち死亡した場合、先に作成された遺言は、のちに作成された遺言によって撤回されたものとみなされます(詳しくはこちらのコラム『遺言の内容の変更の方法』をご覧ください)。それでは、死因贈与契約後、その契約とは別内容の遺言が作成されていた場合では、どのようになるでしょうか。

 

2 事案

生前、Aは、子Bに対し「私が死んだら自宅の土地建物はBにあげる」と言い、AとBは、当該内容で死因贈与契約を締結した。

しかしながら、それ以降、Aと子Bは仲たがいをし、Aは「自宅の土地建物は子Cに相続させる」旨の内容の遺言を作成し、死亡した。

この場合、自宅の土地建物は、BCいずれのものとなるのでしょうか。

 

3 死因贈与は撤回されたものと扱われる

最高裁判例(最判昭和47年5月25日)では、『死因贈与については、遺言の取消に関する民法1022条がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきである。けだし、死因贈与は贈与者の死亡によって贈与の効力が生ずるものであるが、かかる贈与者の死後の財産に関する処分については、遺贈と同様、贈与者の最終意思を尊重し、これによって決するのを相当とするからである。』とし、つまり、民法1022条が準用され、死因贈与はその方式を問わず、撤回可能、としています。

民法第1022条「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」

したがって、上記事案では、死因贈与が遺言によって撤回されたものと扱われ、自宅の土地建物は、Cに帰属することとなります。

弁護士: 中川真緒