後継者への株式譲渡と相続 

事業承継

1 はじめに

会社経営者の相続では、経営者が保有している株式の相続が頻繁に問題となります。会社の事業を承継する後継者以外が、相続を機に、会社経営者が有していた会社株式の相当数を保有することになると、会社の意思決定がスムーズにできない可能性もありますので、後継者に株式も一定程度承継させておきたいというケースもございます。

2 対処方法

後継者に一定の株式を集約するため、会社経営者が後継者となる者に対して、株式を生前贈与したり相続させたりすることが考えられますが、会社経営者の死後に遺留分権利者から、後継者が請求を受けてしまい、その支払のために株式の売却を余儀なくされる場合もあるでしょう。

1 遺留分放棄

上記のようなケースに対処するため、まず、被相続人の生前に遺留分権利者に遺留分を放棄してもらうことが考えられますが、遺留分を放棄する本人が家庭裁判所に遺留分放棄の申し立てて、家庭裁判所の許可を受ける必要があります(民法1049条)。

2 経営承継円滑法の遺留分に関する民法の特例

次に、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑法)3条~10条に基づき、贈与等された株式について、推定相続人と後継者の合意で、遺留分算定基礎となる財産から除外し又は遺留分算定基礎財産に算入する価額を時価に固定する合意書を作成し、経産大臣の確認後、家庭裁判所の許可を得ておく方法も考えられます。

こちらの適用対象については、経営承継円滑法、同施行規則によって細かく定めがありますので、詳しくは弁護士にご相談されることを推奨いたします。なお、法定相続人以外の者が後継者となる場合も近年では増加していますが、法改正により、推定相続人以外のものを「後継者」とした場合にも、こちらの特例の対象となるようになりました。

弁護士: 立野里佳