審判による代償分割①

遺産分割・遺留分

1 はじめに

 遺産の中に不動産がある場合、相続人の1人又は複数人が当該不動産を取得し、取得した相続人が他の相続人に代償金を支払う「代償分割」という方法での遺産分割が可能です。そして、家事事件手続法195条は、「家庭裁判所は、遺産の分割に関する審判をする場合において、特別の事情があると認めるときは、遺産の分割の方法として、共同相続人の1人又は複数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて、現物の分割に代えることができる。」とし、審判において代償分割を命じることができると定めています。

2 審判による代償分割が認められる場合

 家事事件手続法195条が定める審判による代償分割ができる場合としての「特別の事情」に関する裁判例を一つご紹介します。
 大阪高決昭和54年3月8日家月31巻10号71頁は、家事事件手続法制定前ですが同法195条の「特別の事情」と同じく審判による代償分割が可能となる「特別の事由」(家事審判規則109条)に関し、「①相続財産が農業資産その他の不動産であつて細分化を不適当とするものであり、②共同相続人間に代償金支払の方法によることにつき争いがなく、かつ、③当該相続財産の評価額が概ね共同相続人間で一致していること、及び④相続財産を承継する相続人に債務の支払能力がある場合に限ると解すべきである。」と判示しました。「特別の事情」ありとして審判による代償分割が認められるかどうかの判断の基準の一つになると考えられます。

3 審判による代償分割が認められない場合

 なお、上記大阪高決は、上記の判示に続けて「相続人に債務負担能力がないとか、共同相続人間で当該相続財産の評価について著しくその見解を異にし、しかも、その相続財産の価額が特に高価であるような場合には、これを現物分割すればその価値を著るしく減少する性質を有する限り、遺産分割審判において競売を命じその換価金を分割する方法をとるべきである。」として、代償分割ができない場合は、いわゆる換価分割を検討すべきであると判示しています。審判による換価分割については、今後のコラムで取り扱う予定です。

弁護士: 相良 遼