共有持分権の放棄
遺産分割・遺留分
1 はじめに
前回のコラムでは、相続分の放棄について、紹介をいたしました。
相続分の放棄に似て非なる概念として、共有持分権の放棄というものがあります。
共有持分権の放棄とは、特定の財産についての共有持分権を放棄することです。
本コラムでは、共有持分権の放棄について、ご説明いたします。
2相続分の放棄との異同
■単独行為である点
前回、ご紹介した相続分の放棄は、民法上の規定はないものの、単独行為とされており、他の相続人の意思表示は必要はないと考えられています。
そして、共有持分権の放棄についても、最判昭和42年6月22日によれば、共有持分権の放棄も単独行為であると理解されております。
そのため、他の相続人の意思表示を必要としない点では、同一です。
■登記の点
相続分の放棄による登記については、登記原因として認められておらず、相続分の放棄を原因として、登記を変更することはできません。
他方、特定の財産についての共有持分権を放棄することであり、共有持分権の放棄に基づく登記は認められています。
最判昭和44年3月27日最高裁判所民事判例集23巻3号619頁では
「すでに共有の登記のなされている不動産につき、その共有者の一人が持分権を放棄し、その結果、他の共有者がその持分権を取得するに至つた場合において、その権利の変動を第三者に対抗するためには、不動産登記法上、右放棄にかかる持分権の移転登記をなすべきであ」るとされており、共有持分権の放棄は単独行為で可能ではあるものの、第三者への対抗については、登記が必要ということになります。
3 おわりに
共有持分権の放棄は、簡便な登記のためにも利用される場面が多いかと存じます。
遺産分割についてお悩みの場合には、一度専門家にご相談ください。
弁護士: 伊藤由香