遺言執行者による遺産分割協議無効確認の訴え
遺産分割・遺留分
1 遺言執行者が選任されている場合の遺言と異なる内容での遺産分割について
遺言執行者がある場合に、相続人が遺言と異なる遺産分割を行った場合、当該遺産分割は無効となると考えられていることは、以前こちらのコラムでご紹介されておりました(民法1013条)。
2 遺言執行者による遺産分割協議無効確認の訴え
遺言と異なる内容での遺産分割が行った場合、遺言執行者から遺産分割協議無効確認の訴えが提起される恐れがございます。
東京高裁平成11年2月17日判決
『遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し(民法一〇一二条一項)、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができないのであるが(民法一〇一三条)、遺言執行者の相続財産に関する右の管理処分権は、遺言の内容を実現するために必要な限りで付与されているものであるから、遺言執行者は、遺産分割協議が遺言執行者の遺言の執行を妨げる内容を有する場合に、その限度で遺産分割協議の効力を否定することができ、この場合には、遺言執行者が右のような遺産分割協議の無効確認を求めることの利益を否定することはできないが、遺産分割協議が遺言執行者の遺言の執行を妨げるものでない場合には、特段の事由がない限り、遺産分割協議の内容に立ち入る権利も義務も遺言執行者にはないものというべきである。』
上記の通り、遺産分割協議が遺言執行者の遺言執行を妨げる内容であった場合には、その限度で遺産分割協議の効力は否定されることとなります。(上記判例では、遺言は相続させる旨の遺言であり、遺言の執行の余地がない事案であったため、遺言執行者に訴えの利益がないとし、訴えは不適法として却下されました。)
3 最後に
遺言執行者がいる場合に、遺言と異なる遺産分割協議を行えば、遺産分割協議の無効確認の訴えがなされる恐れがあります。遺産分割協議を行う前に、遺言執行者に事前に同意を得ておけば、その点安心です。ぜひ、当所にてご相談ください。
弁護士: 中川真緒