特別寄与分について
遺産分割・遺留分
1 はじめに
従来の法律では「寄与分」として考慮されるのは相続人に限られていました。したがって、介護などを相続人以外の親族が行っていた場合、その者には寄与に対する権利が発生することはありませんでした。しかし、たとえば相続人の配偶者が献身的に介護をしていた場合など、寄与に対する権利が認められないのは不公平であるというのが感覚的なところかと思います。そこで、平成30年に相続法が改正され、特別寄与分という制度が新設されました。
2 特別寄与分とは
相続法改正で以下の条文が新設されました。
第1050条
1 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
特別寄与分を請求できるのは「特別寄与者」といいますが、特別寄与者になるには、以下の要件をみたす必要があります
① 被相続人の相続人以外の親族であること
② 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと
③ ②により、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと
この条件をみたす場合
相続人に対し、特別寄与料の支払いを請求することができます。
そして、協議が調わないとき又は協議をすることができないときは、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過するまでの間、家庭裁判所に対し協議に代わる処分を請求できます。
3 最後に
特別寄与分の制度は新設されたばかりですので、ご不明な点も多いかと存じます。
相続の協議についてお悩みの場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士: 伊藤由香