居住利益(土地編)

遺産分割・遺留分

1 はじめに

 前回のコラム「居住利益(建物編)」に引き続き、本コラムでは、土地の無償使用が特別受益となるかという問題を扱います。事例として、被相続人が所有する土地上に、相続人の一人が建物を建て、その土地を無償で使用している場合を例とします。

2 土地の無償使用

 勿論ケースバイケースですが、土地の無償使用による利益は特別受益にあたると解されている裁判例が見受けられます。理由としては、冒頭の事例の場合、遺産である土地は建物の使用貸借権が設定されている土地(つまり使用貸借の負担のある土地)と評価できますので、土地の価値が減少しており、翻って、相続人が使用貸借権相当額の利益を受けているため、などと説明されます。特別受益の額としては、相続開始時を基準として、更地価格の10~20%程度とする例が見られます(東京地判平成15年11月17日家月57・4・67は更地価格の15%、東京地判平成21年6月26日は更地価格の20%としている)。

3 おわりに

 今回は土地の無償利用を例にあげて実務上の傾向を紹介しました。土地の無償利用が特別受益にあたる場合には、居住利益を受けていた相続人としては、持戻免除の意思表示があったか否かの検討に進むことが多いかと思いますが、この場合には、土地の無償利用に至るまでの被相続人とのやり取り(例えば、被相続人の扶養をする代わりに土地を無償で貸す等のやり取り)が重要になると考えられます。

弁護士: 谷貴洋