不動産鑑定費用を払わない当事者がいる場合の費用の処理

遺産分割・遺留分

はじめに

 遺産分割調停などの裁判手続きにおいて、遺産に不動産が含まれている場合、当該不動産の評価が争点となることがあります。

 当事者間で査定資料を提出し、不動産の評価を合意することが原則ですが、不動産の評価が合意できない場合には、不動産鑑定士を鑑定人に選任し、鑑定を実施する必要があります(家事事件手続法64条1項、民事訴訟法212条以下)。

 しかしながら、鑑定するためには、鑑定費用を予納しなければなりません。

 鑑定費用の予納に協力しない当事者がいる場合には、どのように鑑定を実施するのでしょうか。

鑑定費用の処理方法

 鑑定をするには、鑑定費用の予納が必須で、予納金は法定相続分に応じて負担することが通常です。しかしながら、支払わない当事者がいる場合には、誰かが、立て替えて払う必要があります。

 この場合は、支払わなかった当事者に対する費用について、調停条項または審判主文で処理することになります。

その際の主文は、法定相続分に応じて、

「手続費用のうち、鑑定人〇〇に支払った■■万円(又は鑑定費用)については、2分し、そのうち1を相手方の、その余を申立人の負担とし、その余の費用については、各自の負担とする。」

といった主文になります。

鑑定費用回収の具体的方法

 審判確定後、鑑定費用を支払わなかった当事者に対して、裁判所書記官による費用額の確定処分の申立てを行い回収を図ることになります。

弁護士: 森下 裕