遺留分侵害額の請求の意思表示方法
遺産分割・遺留分
1 遺留分侵害額の請求の意思表示の重要性
遺留分侵害額の請求を行う場合、注意しなければならないのが、消滅時効にかかっていないかどうかです。別コラムで紹介しているとおり、相続が発生し、贈与や遺贈により自身の遺留分が侵害されていることを知った場合は、その時から1年以内に遺留分侵害額請求権を行使する必要があります。
2 内容証明郵便などによる方法
きちんと1年以内に遺留分侵害額請求を行ったと証明できなければ、後に、消滅時効にかかっているとして争いが生じる可能性があります。
そこで、1年以内に遺留分侵害額請求を行ったと証明できるように、配達証明付きの内容証明郵便を送付するなどして、遺留分侵害額の請求の意思表示を行う必要があります。
ここで重要なことが、遺留分侵害額の請求の調停の申立てを行っても、それだけでは、遺留分侵害額の請求の意思表示としては不十分なことです。申立書が相手方に届かなければ意思表示をしたとはいえませんし、また、調停では申立書を相手方が受け取ったかを確認できないこともあるためです。
3 意思表示の内容
遺留分減殺請求を行う場合の意思表示の内容は次のとおりです。
理論上、減殺の対象となる処分行為の特定表示が必要であるとされていますが、合理的意思解釈として特定の処分行為を対象としているものと考えられる内容であれば足ります。実務上は全般的に減殺請求をすることもあります。また、処分行為を特定する手段として目的物の表示をすることがあったとしても、事実上すべての目的物を特定することは困難であるため、必ずしも目的物の表示が必須というわけではありません。遺留分額の表示についても、情報にも時間にも限りがある中で正確な遺留分額を特定して請求することは難しいため、必須ではありません。
平成30年に民法が改正されたことにより、遺留分侵害額の請求ができるようになりました。遺留分侵害額の請求の意思表示について、金銭請求の意思表示をすることになりますが、具体的な請求金額まで明記する必要はなく、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求する、といった内容で足ります。一般的には、相続の開始、贈与又は遺贈があったこと、それにより遺留分が侵害されていること、遺留分侵害額の請求をすることを記載します。贈与又は遺贈があったことについては、上記の遺留分減殺請求の場合と同程度の内容を記載すればよいと考えられます。
4 遺言の無効を主張する場合でも、遺留分侵害額の請求の意思表示をすることもある
遺留分侵害額の請求をする場合、被相続人の遺言によって、特定の相続人に全ての遺産が相続されているようなケースがあります。この場合、遺留分侵害額の請求権者としては、遺言が無効であることを主張したいこともしばしばあります。しかし、遺言の無効を争うことと、遺言は有効であることを前提に遺留分侵害額の請求をすることは、矛盾した主張になります。ここで問題なのが、遺言の無効を主張しているからといって、ただちに遺留分侵害額の請求の意思表示をしたと認められるわけではないことです。
そのため、遺言の無効を主張する場合であっても、予備的に遺留分侵害額の請求権の行使を行うべきです。その方法については、別途弁護士にご相談ください。
弁護士: 仲野恭子