相続人の一部が生死不明の場合の遺産分割の方法の比較
遺産分割・遺留分
1 はじめに
遺産分割において、相続人の一部が生死不明の人がいる場合の対処方法として、
①不在者財産管理人を選任する方法
②失踪宣告の制度を利用し、同人を死亡したものとみなす方法
があることを、『相続人の一部が生死不明の場合の遺産分割の方法』のコラムにおいて、ご説明があります。
この度、両制度の比較につきご説明いたします。
2 失踪宣告を行うメリット・デメリット
(1)メリット
まず、失踪宣告の申立てにおいて、予納金は必要ありません。
そして、失踪宣告を受けた者は、相続人とならないため、代襲相続が生じない限り、相対的に他の相続人の相続分が増加します。
(2)デメリット
失踪宣告の申立てから宣告まで通常1年くらい要します。
また、失踪宣告された人が現れ、失踪が取り消された場合、既に行った遺産分割は取り消されませんが、受け取った遺産が残っていれば、その範囲内で遺産を返さなければなりません。
また、普通失踪宣告を行う場合(民法30条1項)、不在者の生死が不明であることの証明として、以下の資料が必要となり、立証は安易とは言えません。
・警察署長の発行する行方不明者届出受理証明書(捜索届受理証明書)
・不在者宛に、「宛て所に尋ね当らず」等の理由により返送されたもの
・勤務先、親族、知人による陳述書
・本人の通話履歴、メール履歴など
・行方不明による捜索願を掲載した新聞等
・調査会社に依頼した報告書
3 不在者財産管理人の申立てを行うメリット・デメリット
(1)メリット
対象者が「不在者」であることを証明する資料としては、不在者宛に、「宛て所に尋ね当らず」等の理由により返送されたもので対応可能であり、比較的その証明が安易と言えます。
(2)デメリット
不在者財産管理人の申立てには、予納金(通常30~100万円)必要となる他、失踪宣告の場合と異なり他の相続人の相続分に変化はありません。
4 最後に
以上、相続人の一部が生死不明の人がいる場合の対処方法として、①不在者財産管理人を選任する方法 ②失踪宣告の制度を利用し、同人を死亡したものとみなす方法の比較を行いました。
いずれも、手続きは煩雑ですので、相続人が行方不明でお悩みの方は、ぜひ、一度ご相談ください。
弁護士: 中川真緒