封印のある遺言書の開封
遺産分割・遺留分
1 はじめに
法律上、封印のある遺言書については、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができないとされております(民法1004条3項)。
本稿では、封印のある遺言書について、同項に違反して開封した場合について解説いたします。
2 法律上の効果
民法1004条3項に違反して、封印のある遺言書を家庭裁判所外で開封してしまった場合、行政罰(5万円以下の過料)が課せられます(民法1005条)。
他方で、封印のある遺言書を家庭裁判所外で開封してしまった場の遺言書の効力については、民法に特に規定がありませんが、開封自体をもって直ちに無効になるものではないと解されています。
3 家庭裁判所外において開封された遺言の効力を否定した裁判例
家庭裁判所における検認手続の時点で既に開封されてしまっていた遺言書の効力が争われた事案についての裁判例(東京高判平成18年10月25日・判タ1241号49頁)は、遺言書本紙について遺言者の署名押印が存在しないものの、封筒には「遺言書」と記載されたうえで裏面に遺言者の氏名の記載及び押印がなされた遺言書について、遺言書と封筒が一体のものとして作成されたと認めることができるのであれば、遺言書本紙だけでは自筆証書遺言としての方式を欠く場合であっても封筒を含めた全体としてみれば当該遺言書が自筆証書遺言として有効なものと認める余地がある旨判示したうえで、当該事案においては検認手続の時点で封筒が既に開封されていたこと等を理由に、遺言書本紙と不当が一体のものとして作成されたと認めることはできないとして、当該遺言について方式を欠く無効なものであると判断しました。
この裁判例からは、民法1004条3項に違反して遺言書を開封した場合、開封自体をもって直ちに無効になるものではないものの、遺言書と封筒の一体性が否定されることにより遺言書の効力が無効になることはあるため、遺言書の開封の方式が間接的に遺言書の有効性に影響を与えることが読み取れます。
仮に遺言書が家庭裁判所外で開封された場合には、これにより遺言書の有効性が左右されることがあるため、弁護士に相談することをお勧めいたします。
弁護士: 土井將