不動産競売手続きにおける保証金の行方等

遺産分割・遺留分

1 はじめに

 コラム「審判手続における換価分割②:競売手続で相続人が不動産を取得できるか」において、換価分割に関する競売手続についてご説明いたしました。本コラムでは、イレギュラーな論点ですが不動産競売手続における買受申出保証金の行方等についてご説明いたします。

2 前提

(1)保証の提供
 不動産の買受けの申出をしようとする者は、執行裁判所が定める額及び方法による保証を提供しなければなりません(民事執行法第66条)
(2)売却決定
 裁判所は、買受の申出をした者に対し、売却の許可または不許可を言い渡す必要があります(民事執行法第69条)。
(3)買受人による代金の不納付
 買受人が代金を納付しないときは、売却許可決定は、その効力を失い、この場合においては、買受人は、民事執行法第66条の規定により提供した保証(前記(1)ご参照。)の返還を請求することができません(民事執行法第80条第1項)。

3 買受申出保証金の行方

 買受人が返還を請求することができなくなった買受申出保証金は、売却代金(民事執行法第86条第1項第3号)として、配当の原資となります。売却代金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合には、剰余金は債務者(所有者)に交付されます(民事執行法第84条(民事執行法第188条))。
 なお、競売事件が取下げ又は取消しにより終了した場合は、民事執行法第80条第1項(前記2,(3)ご参照。)にかかわらず、買受申出保証金は買受人に戻ってきます。
 

弁護士: 林村 涼