相続人等から遺言無効主張がなされた場合の遺言執行者のなすべき対応1
遺産分割・遺留分
1 はじめに
本コラムでは、遺言執行者の就任後に、共同相続人の一人等から遺言無効の主張がなされた場合における、遺言執行者の対応について解説いたします。
遺言執行者は、「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務」(民法1012条1項)を有し、就任後は「直ちにその任務を行わなければならない」(民法1007条)とされております。他方で、遺言執行者の地位は執行すべき有効な遺言の存在を基礎としており、遺言が無効の場合にはその地位の基礎がなくなる点に、本コラムで取り上げるの問題の所在があります。
2 遺言執行者がなすべき初動対応
遺言執行者としては、上記問題の所在に記載のとおり、遺言が有効であるか否かによってなすべき対応が変わるため、まずは遺言の有効性について積極的に検討する必要があります。
例えば、遺言無効主張の理由が遺言能力欠缺等による場合、遺言執行者は、遺言作成当時の遺言者の心身の状態に関する客観的資料(介護認定に係る資料、診療記録、介護記録等)を収集するとともに、関係者から事情聴取をする等し、積極的に遺言能力の有無について検討することになります。
他方で、遺言無効主張の理由が遺言の形式不備による場合、遺言執行者は、当該遺言の形式的要件等の充足を検討することになります。
3 遺言執行者において遺言が有効であると判断した場合の対応
遺言の有効性の結果として、遺言が有効であると判断した場合、遺言執行者は、遺言の執行を敢行することになります。
この点に関し、遺言が有効であると判断したにもかかわらず、一部の相続人が遺言の無効を主張しているというだけで遺言執行をしない遺言執行者について、その解任事由を認めた裁判例(福岡家小牟田支審昭和45年6月17日・判タ260号340頁)があります。
弁護士: 土井將