遺言と異なる遺産分割と遺言執行者

遺産分割・遺留分

 

「遺言書が存在しますが、相続人全員で話し合った結果、遺言書に記載された分割方法ではなく、異なる内容で遺産分割をしたいという話になりました。遺言執行者が選任されていますが、遺言書と異なる内容で、遺産分割協議を行うことは可能でしょうか。」というお問い合わせがありました。

1 遺言と異なる内容での遺産分割を行うことができるか

 相続人全員の合意があれば、相続人間で別途協議を行い、遺言とは異なる遺産分割を行うことができます。

2 遺言執行者が選任されている場合の注意点

 もっとも、遺言書において遺言執行者が選任されている場合には、相続人全員の合意があったとしても、理論上は、遺言と異なる内容での遺産分割は許されないようにも考えられます。

 というのも、遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない、これに違反してした行為は無効とする(民法1013条)とされているからです。

 しかしながら、実務上は、遺言執行者の了解を得た上で遺言と異なる遺産分割をすることは許されるという見解が有力です。

 

■民法(遺言の執行の妨害行為の禁止)

第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

3 前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。

弁護士: 赤松和佳