死亡した共有者に相続人がいない場合の不動産持分

遺産分割・遺留分

共有不動産

共有不動産については、相続で更に共有者が細分化され増えていくと、管理処分に支障が生じるため、できる限り共有状態を解消することが望ましいという点について、前回のコラム【共有不動産と相続】でご説明いたしました。こちらは共有者に相続人がいる場合のご説明でしたが、今回のコラムでは、相続人がいなかった場合の不動産持分の帰趨についてご説明します。

共有者に相続人がいない場合

民法255条では「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」と定めがあり、同規定によれば、共有者に相続人がいなかった場合、何らの手続を要することなく、直ちに他の共有者が当該持分を引継ぐことができるという考え方もありました。

しかしながら、この点について最高裁の判例(最高裁平成元年11月24日判タ714号77頁)では、以下のとおり判示しています。

「共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、法九五八条の三の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされず、当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、法二五五条により他の共有者に帰属することになると解すべきである。」

上記判例の考え方では、亡くなった共有者の相続人が不存在であったときでも、裁判所による手続を経て、特別縁故者への財産分与をしなかった又は分与をしても共有持分が相続財産に残存することが確定したときにはじめて、他の共有者に帰属することになります。

 

 

弁護士: 立野里佳