国際相続(5):中華人民共和国(中国)の法律における相続時の夫婦共有財産について

国際相続

2023年2月24日/弁護士 武田雄司

1.はじめに

 本稿では、中華人民共和国の法律が適用される場合の、相続時における夫婦共有財産処理について確認したいと思います。

2.中華人民共和国(中国)法が定める相続時における夫婦共有財産の処理について

 中華人民共和国の「民法典」(第13期全国人民代表大会第3回会議2020.05.28公布、2021.01.01施行、主席令第45号)には、次のとおり規定されています。

第1153条 夫婦の共同所有の財産については、約定がある場合を除き、遺産分割の際に、まず共同所有の財産の半分を配偶者の所有として分別し、その余を被相続人の遺産としなければならない。
 遺産が家族の共有財産の中にある場合には、遺産分割の際に、まず他の者の財産を分別しなければならない。

 このように、夫婦共有財産については、特別な約定がある場合を除き、まず配偶者の所有分を分別することとされているため、形式的に被相続人の名義人になっている財産の全てが遺産となるわけではない点に留意が必要です。

3.中華人民共和国(中国)法が定める夫婦共有財産とは

 中華人民共和国の「民法典」(第13期全国人民代表大会第3回会議2020.05.28公布、2021.01.01施行、主席令第45号)には、次のとおり規定されています。

第1062条 夫婦が婚姻関係存続期間において取得する次に掲げる財産は、夫婦の共同財産とし、夫婦の共同所有に帰属する。
  (一)賃金、賞与及び役務報酬
  (二)生産、経営又は投資による収益
  (三)知的財産権による収益
  (四)相続し、又は贈与を受けた財産。ただし、次条第(三)号所定のものを除く。
  (五)共同所有に帰属するべきその他の財産
  夫婦は、共同財産に対し、平等な処理権を有する。

第1063条 次に掲げる財産は、夫婦の一方の個人財産とする。
  (一)一方の婚姻前の財産
  (二)一方が人身損害を受けたことにより取得する賠償又は補償
  (三)遺言又は贈与契約において、一方のみに帰属する旨が確定される財産
  (四)一方の専用する生活用品
  (五)一方に帰属するべきその他の財産

4.まとめ

 中華人民共和国の法律が適用される場合、夫婦として婚姻生活をしている中で取得した財産は、概ね夫婦共有財産となります。

 そして、夫婦共有財産については、特別な約定がある場合を除き、遺産分割前に、まず配偶者の所有分を分別することとされています。

 そのため、形式的に被相続人の名義人になっている財産しかない相続のケースにおいては、日本法の感覚で、全てを遺産として処理しようとしてしまいがちですが、まずは、生存配偶者に対して、配偶者の所有分を分別する必要があるため、注意が必要です。

以 上

弁護士: 武田雄司