複数相手がいる場合の遺留分侵害額請求

遺産分割・遺留分

1 遺留分侵害額請求の相手方

 「亡くなった親が遺言を残していたが、自分以外の相続人に多く渡すような内容になっていた。」という場合、「自分以外の相続人」に対し、遺留分侵害額の請求を行うことができる可能性があります。遺留分侵害額請求は、遺留分を侵害する遺贈又は贈与を受けた者に対して行うことになります(民法1046条1項)。ここで、「自分以外の相続人」が複数いる場合、誰に対してどのような内容の請求ができるのでしょうか。

2 民法のルール

 この場合、民法には以下のルールが定められています(1047条1項)。なお、「受遺者」とは「遺言により財産をもらった人」を意味し、「受贈者」とは「生前贈与により財産をもらった人」を意味します。

 ①受遺者と受贈者があるときは、受遺者が先に負担する(1号)

 ②受遺者が複数あるとき、または受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者または受贈者がその目的物の価額の割合に応じて負担する(ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示していたときは、その意思に従う(2号)。

 ③受贈者が複数あるとき(贈与が同時にされた場合を除く)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する(3号)。

3 具体例

 冒頭のような「遺言」の不平等性を理由に遺留分侵害額請求を考える場合、誰に対してどのような内容が請求できるかは、②のルールで決まります。具体例として、「A・B・Cという3人の子がいる親が「Aに6000万円、Bに3000万円を渡す(遺産総額は9000万円)」という内容の遺言を作成していた」という事例を考えます。

 このケースにおけるCの遺留分侵害額は1500万円となります(遺産総額9000万円×1/2×1/3)。Cは、この1500万円を、受遺者であるAとBに対して請求できるわけですが、上記②のルールに従ってAとBに「その目的物の価額の割合に従って」(A:B=2:1)、Aに対して1000万円、Bに対して500万円を請求することができるということになります。

 実際の相続の場面では、このような単純な例ではなく、より細かくより複雑な問題を抱えているケースも多いと思いますので、遺言や生前贈与の内容が不平等であると感じておられる方は、ぜひ当事務所までご相談ください。

以 上

弁護士: 相良 遼