遺留分と寄与分の関係②-遺留分侵害額と寄与分

遺産分割・遺留分

1 遺留分制度と寄与分制度の関係

  遺留分制度は、被相続人による生前贈与や遺贈にかかわらず、被相続人が有していた相続財産の一定割合の承継を一定の法定相続人に保障する制度です(民法1043条1項参照)。

  一方、寄与分制度は、共同相続人中に、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者がいる場合に、他の相続人との間の実質的な衡平を図るため、その寄与相続人に対して相続人以上の財産を取得させるための制度です。

  ここで、両制度の関係が問題となります。具体的には、①遺留分を侵害する寄与分の定めが可能かどうかという問題と、②遺留分侵害額請求において寄与分がどのように考慮されるのかという問題が生じます。①の問題については別コラム「遺留分と寄与分の関係①-遺留分を侵害する寄与分の定め」で記載をしておりますので、本コラムでは②について記載していきます。

 

2 遺留分侵害額の算定において寄与分は考慮されない

  まず、遺留分侵害額の計算において寄与分は考慮されません。遺留分侵害額請求の計算については「遺留分侵害額の計算方法」というコラムで記載しておりますが、その計算方法に「寄与分」は現れません。つまり、遺留分権利者に寄与分があったとしても遺留分侵害額は増やせないし、また、遺留分義務者に寄与分があったとしても遺留分侵害額は減らせないということになります。

  改正前の「遺留分減殺請求」についての裁判例ですが、東京高等裁判所も、遺留分権利者からの遺留分減殺請求に対し、遺留分義務者が自己の寄与分を主張することはできないと判示しております(東京高判平成3年7月30日判時1400号26頁)。

弁護士: 相良 遼