国際相続(2):中華人民共和国(中国)の法律における相続人及び相続分について

国際相続

2022年11月4日/弁護士 武田雄司

1.はじめに

 日本に居住する中華人民共和国の国籍の方がお亡くなりになり発生した相続のケースでも、「経常的住所地の法律」である日本法が適用されることとなりますが、お亡くなりになった方が、中華人民共和国に不動産を有していた場合、当該不動産に関しては、不動産が所在する地の中華人民共和国の法律(民法典 第6編 相続)が適用されることになります。

 それでは、このようなケースで、中華人民共和国の法律が適用される不動産については、誰が相続人になるか、またその法定相続分はどのように規定されているか確認をしていきたいと思います。

2.中華人民共和国の法律に規定されている相続人

 中華人民共和国の相続法には以下のとおり規定されており、第3順位まで設定されている日本法と異なり、第2順位までとなっています。

 そして、第1順位の中に、配偶者、子供と父母が含まれており、父母が最初の相続人になるという点に注意が必要です(※日本法では、父母は第二順位)。

 また、第2順位の兄弟姉妹と合わせて、祖父母(文言上は「外祖父母」と分かれていますが、父方及び母方の祖父母が相続人になるという意味になります。)が相続人とされている点も日本法と異なる点となりますので、留意が必要です。
(日本法では、祖父母は、父母がいない場合の第2順位となります。)

 なお、代襲相続は、日本法と同様となっています。
※民法典の規定では、子供の再代襲(相続発生前に子供の子供(=孫))が亡くなっていた場合の代襲相続)については特に定めがないものの、「「民法典」相続編の適用に関する最高人民法院の解釈(一)」14条において、子供の再代襲については、世代の制限はない旨規定されているため、結論として日本法と同じとなっています。

 2019年7月1日から施行された日本民法の改正法で追加された「特別の寄与」(日本民法1050条)の制度では、相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には,相続人に対して金銭の請求をすることができるようになりましたが、中華人民共和国では、「配偶者を亡くした嫁が夫の父母に対し、又は配偶者を亡くした婿が妻の父母に対し、主たる尊属扶養義務を尽くした場合」には、第1順位の相続人になると規定されており、この点が大きな違いとなっています。

■参考規定
「民法典」(第13期全国人民代表大会第3回会議2020.05.28公布、2021.01.01施行、主席令第45号)
第1127条 遺産は、次に掲げる順位に従いこれを相続する。
  (一)第1順位:配偶者、子及び父母
  (二)第2順位:兄弟姉妹、祖父母及び外祖父母
  相続開始後は、第1順位の相続人が相続し、第2順位の相続人は相続しない。相続する第1順位の相続人がない場合には、第2順位の相続人が相続する。
  この編にいう子には、嫡出子、非嫡出子、養子及び扶養関係を有する継子を含む。
  この編にいう父母には、実父母、養父母及び扶養関係を有する継父母を含む。
  この編にいう兄弟姉妹には、同父母の兄弟姉妹、同父異母又は同母異父の兄弟姉妹、養兄弟姉妹及び扶養関係を有する継兄弟姉妹を含む。

第1128条 被相続人の子が被相続人より先に死亡した場合には、被相続人の子の直系卑属が代襲相続する。
  被相続人の兄弟姉妹が被相続人より先に死亡した場合には、被相続人の兄弟姉妹の子が代襲相続する。
  代襲相続人は、一般に被代襲相続人が相続する権利を有する遺産相続分のみを相続することができる。

第1129条 配偶者を亡くした嫁が夫の父母に対し、又は配偶者を亡くした婿が妻の父母に対し、主たる尊属扶養義務を尽くした場合には、第1順位の相続人とする。

「「民法典」相続編の適用に関する最高人民法院の解釈(一)」(最高人民法院2020.12.29公布、2021.01.01施行、法釈[2020]23号)
第14条 被相続人の孫、外孫、曾孫及び外曾孫は、いずれも代襲相続することができ、代襲相続人は、世代の制限を受けない。

3.中華人民共和国の法律に規定されている相続分

 中華人民共和国の相続法には以下のとおり規定されており、同一順位の相続人間では、相続分は均等となります。

 そのため、配偶者が相続人となる場合、常に2分の1と設定されている日本法と比べると、配偶者の相続分が小さくなる可能性が大きい設計となっています。

 また、扶養能力、扶養義務に履行状況に応じて、分配を変更させることも想定している点が中華人民共和国の法律の特徴となります。

■参考規定
「民法典」
第1130条 同一順位の相続人が相続する遺産の相続分は、一般に均等でなければならない。
  生活に特段の困難があり、かつ、労働能力を欠く相続人については、遺産を分配する際に、配慮をしなければならない。
  被相続人に対し主たる扶養義務を尽くし、又は被相続人と共同生活した相続人については、遺産を分配する際に、多く分配することができる。
  扶養能力を有し、及び扶養条件を有する相続人が扶養義務を尽くさない場合には、遺産を分配する際に、分配せず、又は少なく分配しなければならない。
  相続人が協議により同意した場合には、均等にしないこともできる。

第1131条 被相続人の扶養に依存していた相続人以外の者又は被相続人に対する扶養が比較的多かった相続人以外の者については、適当な遺産を分配することができる。

以上

弁護士: 武田雄司