被相続人に債務がある場合の遺留分算定の基礎となる財産の算定

遺産分割・遺留分

1 遺留分算定の基礎となる財産の算定

 被相続人に債務がある場合には、遺留分算定の基礎となる財産の算定に際し、債務額を控除します(民法1043条1項)。

2 控除される債務の範囲

 控除される債務には、私法上の債務だけなく、税金や罰金等の公法上の債務も含まれます。

3 保証債務の取扱い

 保証債務も、控除される債務の範囲に含まれるかという点については、「特段の事情」、すなわち、「主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならず、かつ、その履行による出捐を主たる債務者に求償しても返還を受けられる見込みがないような」事情が存在しない限りは控除される「債務」(民法1043条1項)に含まれないとされております。

 したがって、保証債務については、原則として、控除される債務の範囲に含まれないものの、個々の事案に応じて上記「特段の事情」が存在しないか否かを検討する必要があります。

■東京高裁平成8年11月7日判決

「保証債務(連帯保証債務を含む)は、保証人において将来現実にその債務を履行するか否か不確実であるばかりでなく、保証人が複数存在する場合もあり、その場合は履行の額も主たる債務の額と同額であるとは限らず、仮に将来その債務を履行した場合であっても、その履行による出捐は、法律上は主たる債務者に対する求償権の行使によって返還を受けうるものであるから、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならず、かつ、その履行による出捐を主たる債務者に求償しても返還を受けられる見込みがないような特段の事情が存在する場合でない限り(改正前)民法一〇二九条所定の「債務」に含まれないものと解するのが相当である。」

 

4 遺言執行費用・相続財産管理費用の取扱い

 控除される債務には、遺言執行費用・相続財産管理費用は含まれません(民法1021条、民法885条参照。)。

 

次回は、具体的な遺留分侵害額算定における債務の取扱いについて検討します。

 

弁護士: 赤松和佳