遺産分割調停に出席しない当事者がいる場合

遺産分割・遺留分

1 調停に代わる審判の活用

遺産分割調停を申し立てても、数次相続が発生しており、遺産分割に対する関心が薄い当事者が出席しなかったり、敵対的な意向のため敢えて出席しない当事者がいることが考えられます。遺産分割調停に出席しない当事者がいる場合に活用されている方法が、調停に代わる審判です。調停に代わる審判とは、家庭裁判所が、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権でなされる、事件の解決のため必要な審判をいいます(家事事件手続法284条1項)。

なお、審判の結果に不服がある場合には、当事者は、調停に代わる審判に対し、家庭裁判所に異議を申し立てることができます。

 

2 実務上の対応

調停に出席しない当事者がいる場合でも、その当事者が書面で意向を示すことができます。裁判所は、欠席当事者が提出した書面も確認し、欠席当事者の遺産分割の意向を確認することがあります。実務上、家庭裁判所は、申立人以外の当事者に、遺産分割調停申立書とともに答弁書の書式を送付することが一般的です。また、欠席当事者に対して、期日ごとに呼出状を送ることもあります。

欠席理由、遺産分割の意向を確認するため、裁判所は、出席当事者から欠席当事者の状況などの確認をすることもあります。

さらに、出席当事者間で合意できた遺産分割の内容について中間調書に記載し、それを書面にして欠席当事者に送り、意向を照会することもあります。

 

調停に代わる審判をしても欠席当事者から異議を申し立てられれば、せっかくの審判も意味がなくなりますので、上記のように裁判所から欠席当事者に意向確認がなされます。

そして、裁判所は、欠席当事者の相続分に相当する遺産の価額を確保できるような内容であれば、調停に代わる審判を出すことになります。

ただし、もちろん出席当事者の話合いが前提として調停が進みますので、欠席当事者にとって良い審判内容になるかどうかは不明ではあります。調停の申立書が届き、対応がよく分からない等ありましたら、弁護士に相談されるのも一案かと思います。

弁護士: 仲野恭子