遺産分割協議の効力

遺産分割・遺留分

1 はじめに

遺産分割協議の有効性が争われる場合としては、遺産分割協議の参加者に不備があった、当事者の意思に瑕疵があった(錯誤、詐欺、脅迫など)等々、様々な場合が考えられます。

今回は、外形上は、有効と思われる遺産分割協議書が作成されていたものの、手続等に問題があったとして、遺産分割協議が無効とされた大阪地裁の裁判例(大阪地裁平成8年2月20日判決)を紹介します。

2 大阪地裁平成8年2月20日判決

裁判例は、概要、以下のような内容を判示しています。

● 遺産分割協議において、1人の相続人の配偶者(A)が遺産分割協議を主導し、他の相続人に対し、分割方法を一任させた
● Aが、遺産等(実際には遺産外の不動産も含まれた。)を複数グループに分けた上で、相続人らを年長者順に別室に呼び出し、そこで初めて、各グループの遺産内容を示して、その一つを選択させ、その後は、他の相続人に会わないように帰宅させた
● 各グループの遺産等の内容は、Aの計算にもとづいても、最も高額なグループと最も低額のグループとの間には4000万円を超える差があるなど均等とはいえない内容であって、かつ、最後の順番(年少の者)は、残された不利な内容のグループを選ばざるを得なかった

●以上によれば、●年●月●日の遺産分割協議は、一見意思表示が合致したような形をとっているものの、協議という名に値しない不公平なものであって、信義に反して作成されたものとして、遺産分割としての効力を有しない

3 おわりに

こちらの裁判例では、外形上は分割協議の意思表示が合致したという体裁をとっていました。しかしながら、分割内容や分割協議の実施方法について個別具体的な事情を認定して遺産分割協議の効力を否定されていますので、遺産分割協議の実施にあたっては、協議書の内容だけでなく実施の方法も充分に留意する必要があるといえます。

弁護士: 立野里佳