遺産分割協議の不動産価値の評価についての審理の進め方

遺産分割・遺留分

1 はじめに

 本コラムでは、遺産分割協議において、不動産価値の評価をどのように決めるか、審理の進め方についてご説明いたします。
 なお、不動産の評価方法については、コラム『遺産分割における不動産の評価方法』にて詳述しておりますので、ご参照ください。

2 遺産分割協議における不動産評価額の審理

(1)裁判外での交渉において

 裁判外での交渉(及び遺産分割調停)においては、いかなる方法を用いて不動産を評価しても、その不動産評価額について当事者の合意が成立する限り、問題ありません。
 しかし、不動産の単独相続を希望し、その余の相続人に代償金を支払う立場の相続人は、不動産の価値を低めに評価し、支払う代償金の金額を低くしたいと考えるでしょう。一方、代償金を受け取る立場の相続人は、不動産の価値を高めに評価し、得る代償金の金額を高くしたいと考えるでしょう。
 用いる不動産評価方法によっては、評価額が、不動産の実際の時価よりも低く、もしくは高く、評価されることとなりますので、遺産分割協議において、不動産評価方法は、慎重に選択すべきです。

(2)遺産分割調停において

 遺産分割調停においても、当事者間が合意すれば調停は成立しますので、上記(1)の裁判外の交渉と同様に、当事者間の合意を目指すこととなります。
 なお、紛争性が高く、一方が提出した私的鑑定による鑑定評価額、不動産会社の価格査定書などで合意を形成することが出来ない上、さらには、固定資産税評価額や路線価といった客観性の高い公正な資料に基づいた評価額でも合意が形成出来ない場合、不動産鑑定士を鑑定人に選任して評価を行うこととなります(家事事件手続法64条1項、民事訴訟法212条)。 
 全員の合意がなくても、鑑定費用の予納金が全額支払われれば、鑑定は実施されます。鑑定費用の予納金は、予納金は法定相続分に応じて負担することが通常です。なお、不動産鑑定費用を支払わない当事者がいる場合の費用の処理方法については、こちらのコラムをご確認ください。

(3)遺産分割審判において

 当事者間で合意に至らず、調停が不成立となった場合、裁判所は審判に移行します。審判手続きにおいて不動産鑑定士の資格を有する参与員が関与することがあります(家事事件手続法40条1項本文)。裁判所の選任する不動産鑑定士によって不動産鑑定がされていた場合、鑑定評価を基に、裁判所が審判することとなります。

3 最後に

 以上、調停や審判における不動産の評価額の審理内容についてご説明しました。当事者の立場によっては、不動産が高く評価された方が良い、低く評価された方が良い、という場合がございます。ご依頼者のご意向に応じて、様々な不動産の評価方法を用いて交渉代理をさせて頂きますので、ぜひ、一度、ご相談くださいませ。

 

弁護士: 中川真緒