相続人の範囲 その2

遺産分割・遺留分

1 はじめに

 

本記事においては、「相続人の範囲と相続放棄」で説明した相続人の範囲について、さらに詳細に説明をしているものです。

 

2 養子の子の代襲相続権

 

養子縁組【前】に出生した養子の子には、養親の代襲相続権がありません。

養子縁組【後】に出生した養子の子には、養親の代襲相続権があります。

被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき等は、その者の子がこれを代襲して相続人となります。ただし、その子が被相続人の直系卑属でなければなりません(民法887条2項)

そして、養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します(民法809条)。

そのため、養子縁組後に出生した養子の子に、出生時において既に養子と養親との間に血族関係が生じているため、養親の直系卑属になり、代襲相続権を持ちます。

一方、養子縁組によって、養子と養親及びその血族との間に血族関係は生じますが(民法727条)、養親と養子の血族との間に血族関係が生じるとの規定はありません。そのため、養子縁組前に出生した養子の子には、養親の代襲相続権がありません。

 

3 養子の実方の父母及びその血族の相続権

 

特別養子については、実方の血族との親族関係が終了するため(民法817条の2)、養子縁組後に生じた実方の父母及びその血族の相続については相続権はありません。

普通養子には、特別養子のような規定がないため、養子の実方の父母及びその血族の相続権を有します。

 

4 夫婦の一方のみと養子縁組している養子の相続権

 

夫婦の一方とのみ養子縁組をしている養子には、養親の配偶者の相続の相続権はありません。

上述のとおり、養子縁組によって、養子と養親及びその血族との間に血族関係は生じます(民法727条)。配偶者は、他方の配偶者の親族ではありますが(民法725条)、血族ではないため、養子と養親の配偶者との間に血族関係は生じません。結果として、夫婦の一方のみと養子縁組している養子は、養子縁組していないその人の相続権を持ちません。

弁護士: 仲野恭子