特別縁故者への財産分与 その②

遺産分割・遺留分

1 特別縁故者制度

法定相続権がない方においても①被相続人と生計を同じくしていた者、②被相続人の療養看護に努めた者、③その他被相続人と特別の縁故があった者(民法958条の3)については、家庭裁判所の審判により相続財産の全部または一部を受け取ることが可能であることを、前回のコラム【特別縁故者への財産分与  その①】でご説明しました。

2 分与の可否及び内容についての判断

今回は、裁判実務において、上記の③その他被相続人と特別の縁故があった者に該当するかどうか、そして、分与する内容が判断される際に、どのような要素が重視されているかを、いくつか紹介いたします。

  •  自然的血縁関係や年齢

裁判例上、血縁関係がない場合にも、その他の事情により特別縁故者として認められることはありますが、血縁関係があると、そのこと自体が切り離すことができない因縁であり、縁故関係が濃いと判断され、分与の判断にあたってプラスの事情として考慮されます。

  • 生前の故人の保護に努め、生活上の援助をしていた者であるか

1の①②には明確に該当しない場合にも、故人への経済的援助や精神的援助が認められる場合には、分与の判断にあたってプラスの事情として考慮されます。

  • 生前の交際の頻度、及び、故人の死の間際までつながりを保っていた者であるか

たとえば、交際の頻度や時期などから、通常の親族や友人関係を超えた関係性があると認められる場合には、分与の判断にあたってプラスの事情として考慮されます。

  • 故人の死亡後に葬儀や法要を執り行った者であるか

生前の事情だけでなく、死後の事情についても分与の判断にあたってプラスの事情として考慮されます。

  •  故人が遺言をのこしていれば、遺贈の対象となったと思われる者であるか

たとえば、遺言書の様式ではなかった結果、正式な遺言書としては認められないものの、故人が、日記などに、特定の人に財産を譲りたいなどの遺志をつづっていた場合には、分与の判断にあたってプラスの事情として考慮されます。

3 おわりに

特別縁故者への分与の可否や内容は、裁判所の判断によって決まりますので、適切な分与を受けるためには、生前の故人との関係性や縁故の濃さなどを客観的な証拠をもとに裁判所に伝えていくことが重要となります。当事務所では、個別の事案に合わせて、裁判所への説明方法を工夫するなどして対応させていただいておりますので、特別縁故者の申立てをご検討されている方は、ぜひご相談いただければと存じます。

弁護士: 立野里佳