代償金の確保
遺産分割・遺留分
1 代償金の確保
遺産分割において、代償分割を行う場合、合意内容どおり代償金の支払いがあるべきですが、きちんと代償金を支払ってくれるか不安な場合もあるかと思います。対象不動産が被相続人名義である場合、相続を原因とする所有権移転登記と代償金支払いを引換給付にすることはできないため、それ以外の方法を取る必要があります。
なお、事前検討として、不動産の遺産分割における税金・社会保険料等を考慮すると、換価分割による方法も検討すべきです。ぜひ別コラムもご覧ください(不動産の遺産分割における税金・社会保険料等|実績・事例と専門知識|相続(遺産分割・遺留分)法務相談サイト|賢誠総合法律事務所 (k-inheritance.com)。
2 遺産分割協議成立と同時の支払い
遺産分割協議や遺産分割調停の場合には、代償金の支払いを確実にするため、代償金の支払いと引き換えに、遺産分割を成立させる方法があります。遺産分割を成立させると同時に代償金の支払いを実施してもらいます。
3 審判前の保全処分
調停や審判を行うとともに、審判前の保全処分により、相続人の財産の仮差押えを行うことが考えられます。仮差押えの要件は、①本案審判が継続していること、②本案審判の認容の蓋然性(ある相続人が遺産を取得し、申立人が代償金の支払いを受けることになる蓋然性があること)、③保全の必要性です。ただし、仮差押えをするためには供託金が必要になります。
4 法定相続分どおりの共同相続登記の実施
一度法定相続分どおりの共同相続登記をした上で、代償金の支払いと共有持分移転登記手続きを同時履行とする方法もあります。なお、法定相続分どおりの共同相続は、共同相続人の1人が相続人全員のために単独真正することができます。ただし、法定相続分どおりの共同相続登記の実施には登録免許税がかかります。
5 まずは、相手方の支払能力を確認
上記のような方法を取らなくても済むように、まずは相手方の支払能力を確認するべきと考えられます。預貯金や勤務先が判明している場合には、仮に債務名義ができた場合、代償金支払い確保のため、強制執行を行い、スムーズに代償金回収が実施できる可能性があります。
弁護士: 仲野恭子