遺言無効確認請求訴訟における被告の選定

遺産分割・遺留分

1 はじめに

本コラムは、遺言の効力を争うために遺言無効確認請求訴訟を提起する場合において、「誰を被告とすべきか」という点について説明するものです。

遺言無効確認請求訴訟の被告となり得る者には、遺言者の相続人及び受贈者とその承継人、並びに遺言執行者が考えられますが、以下、詳述します。

2 遺言執行者の当事者適格

従前の裁判実務において、遺言執行者は、遺言の効力を争う者が遺言の執行を阻止するために提起する遺言無効確認請求訴訟の被告となることができると解されておりました(最三小判昭和31年9月18日・民集10巻9号1160頁参照。平成30年法律第72号(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律)により遺言執行者の権利義務に関する民法1012条が改正されましたが、これは遺言執行者の職務について、遺言の内容を実現することにある点が明確化されたに過ぎないものですので、改正民法下においても遺言執行者の当事者適格に変わりはないものと解することができます。

3 固有必要的共同訴訟か否か

遺言無効確認請求訴訟の性質について判断した判例(最二小判昭和56年9月11日・民集35巻6号1013頁)は、遺言無効確認請求訴訟の実質が相続財産に対する相手方の権利の全部又は一部の不存在の主張であること、及び相続財産に対する共同所有関係は合有ではなく共有と解すべきであることに鑑みて、同訴訟が固有必要的共同訴訟とはいえないと判示しました。そのため、遺言無効確認請求訴訟を提起する際には、被告となり得る者の一部のみを被告とすることも可能です。

もっとも、遺言無効確認請求訴訟の判決には対世効がなく、同訴訟の被告以外の者に対して判決の効力が及びません。そのため、遺言の無効を前提として別途の問題を解決することが想定されている場合、別途の問題の相手方も被告にすること等を検討する必要がある点に注意が必要です。

 

弁護士: 土井將