相続分の譲渡と遺産分割手続からの排除

遺産分割・遺留分

「裁判所から遺産分割調停申立書が届いたが、私は、相続人間の揉め事に巻き込まれたくないし、相続を希望しない。ただ、自分の相続分は、相続人の中でも、被相続人に長年寄り添ってきた配偶者の方に譲りたいと考えており、配偶者の方もこれを了承しています。」という相談がありました。

1 相続分の譲渡

 このような場合には、相続分の譲渡という方法があります。相続分の全部を譲渡した場合には、譲渡人は、相続人としての地位を喪失することになります。

 相続分の譲渡とは、遺産全体に対する共同相続人の包括的持分または法律上の地位を譲渡することです。

 最三小判例平成13年7月10日(民法55巻5号955頁)においては、「共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは、積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し、譲受人は従前から有していた相続分と新たに取得した相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割に加わることとなり、分割が実行されれば、その結果に従って相続開始の時にさかのぼって被相続人からの直接的な権利移転が生ずることになる。このように、相続分の譲受人たる共同相続人の遺産分割前における地位は、持分割合の数値が異なるだけで、相続によって取得した地位と本質的に異なるものではない。そして、遺産分割がされるまでの間は、共同相続人がそれぞれの持分割合により相続財産を共有することになるところ、上記相続分の譲渡に伴って個々の相続財産についての共有持分の移転も生ずるものと解される。相続分の譲渡により生ずるこのような法的な状態は、譲渡前に個々の不動産について相続の登記がされたか否かにより左右されるものではない。」とされております。

2 手続からの排除の決定

 そして、譲渡人は、裁判所に相続分の全部を譲渡した旨を届け出て、裁判所において、手続から排除する旨の決定を受けることにより、遺産分割手続の当事者でなくなることができます。

 相続分の譲渡に関する手続をご希望の方は当事務所にお気軽にご相談ください。

弁護士: 赤松和佳