相続人の地位が争われる場合の遺産分割

遺産分割・遺留分

1 相続人の地位が争われる場合とは

具体例として、相続欠格事由(民法891条)の存否、推定相続人排除事由(民法892条、893条)の存否が争点となっている場合や、婚姻や養子縁組、離婚、認知などの効力を巡り、被相続人との身分関係が争点となっている場合などがあげられます。

 

2 遺産分割後に認知によって相続人となった者について

相続開始後に認知によって相続人となった者(民法781条2項、同法787条)が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしていた場合には、価額のみによる支払いの請求をすることが出来ます(民法910条)。

 

3 上記2の場合以外で、相続人が加わる可能性がある争いがある場合について

その他の場合において、相続人の資格が確認された者については、民法910条を類推適用して価額による請求を認めることが出来ないか、問題となります。

この点、最高裁判例(最小判昭和54年3月23日民集33巻2号294頁)では、母の死亡による相続につき、遺産の分割その他の処分後に、共同相続人である子の存在が明らかになった事案において、民法784条但し書き、同法910条の類推適用を否定しました。この場合、遺産分割は無効、再分割請求がなされます。

つまり、当事者たるべき相続人の一部を除外してなされた遺産分割は、民法910条が予定する認知に関する争いがある場合を除いて、価格による請求はみとめることができず、無効、再分割となります。

 

3 最後に

 以上より、そもそも相続人の地位に争いがある場合には遺産分割を行うべきではないかと存じます。前提問題の解決から、遺産分割に至るまでご対応いたしますので、一度ご相談くださいませ。

 

弁護士: 中川真緒