数次相続の注意点
遺産分割・遺留分
~~ 数次相続の注意点 ~~
例えば、あなたの父親Aがある日亡くなったとして、あなたと他の相続人(母親B、あなたの妹C)が、これまで父親Aが住んでいた父親Aの名義であろう土地・建物について、これを売却して売却金を分け合いたいと考えたとします。
そのため、あらためて不動産の登記の名義を確認したところ、予想に反し、そこには、父親Aではなく父親Aより何十年も前に亡くなっていた祖父Xの名義が残っていた、ということは決して珍しくありません。
このように、被相続人(上記の例での祖父X)が死亡した後に、遺産分割協議をしないうちに上記の被相続人(祖父X)の相続人(上記の例での父親A)が死亡してしまい、次の相続が発生した状況を「数次相続」といいます。
上記の例では、祖父Xについての相続が一次相続、その後の父親Aについての相続が二次相続に当たります。
「数次相続」が発生している場合、遺産分割ができる地位は次の相続人に引き継がれることになりますので、一次相続の遺産分割の協議であっても、二次相続の相続人が参加しなければならないこととなります。
つまり、上記の例でいえば、祖父Xについての遺産分割協議(これが成立しなければ、不動産の名義を変更することも、不動産を売却することもできません)を行う場合、あなた、母親B、妹Cのほか、祖父Xの相続人(例えば、父親Aの兄弟)あるいはこの相続人が既に亡くなっている場合はさらにその相続人(例えば、父親Aの兄弟の子供など)もこの遺産分割協議に参加しなければならなくなります。
その結果、一次相続(祖父Xの死亡)からの経過年数や一相続の相続人の人数によっては、予想していたよりもはるかに多い人数の相続人と連絡をとって協議をしなければならないこともありますし、遺産分割協議に参加しなければならない相続人を見落としたまま遺産分割協議を成立させても無効となってしまいますので、一次相続(祖父X)の出生に遡った全相続人の十分な戸籍・所在調査が必要となります。
また、「数次相続」と似たような状況として、「代襲相続」というものがあります。
この「代襲相続」とは、本来相続人となるはずの子または兄弟姉妹が相続の開始前に死亡していたり、相続権を失ったりしていた場合に、その人に代わって、その子供が相続にとなるというものですが、同じ立場でも、「数次相続」では相続人になるのに、「代襲相続」では相続人にならない人がいるので注意が必要です。
例えば、上記の例でいうと、父親Aの妻Bは、父親Aが祖父Xより後に死亡している「数次相続」では二次相続人として祖父Xについての遺産分割協議に参加しなければなりませんが、父親Aが祖父Xより前に死亡していた場合すなわち「代襲相続」が発生する場合には、祖父Xについての遺産分割協議には参加できません。
さらに、「数次相続」の場合、相続税申告上も、通常の相続とは異なる以下のような注意点があります。
・ 申告と納税義務が引き継がれる
・ 相続税の申告期限が延長される
・ 基礎控除は増えない
以上の通り、「数次相続」は、相続人の調査や調査の結果判明した多数ないし疎遠な相続人との連絡・交渉など、ご自身で行うと負担が大きくなることが予想されますので、是非一度弊所までご相談ください。
以上
弁護士: 原 萌野