審判手続における換価分割①:終局審判としての換価分割

遺産分割・遺留分

1 はじめに

 遺産の中に不動産がある場合、当該不動産を売却等により換価して、その代金を分配する「換価分割」という方法での遺産分割が可能です。相続人での審判手続における換価分割には、「終局審判としての換価分割」と「中間処分としての換価を命ずる裁判(審判以外の裁判)」の2種類があります。本コラムでは、「終局審判としての換価分割」について記載していきます。

2 終局審判としての換価分割

 「終局審判としての換価分割」は、裁判所が遺産分割に関する最終判断として「競売」による換価分割を命じる審判であり、換価分割を命ずる審判の主文の例は以下の通りです。

「別紙遺産目録記載1の土地の競売を命じ、その売却代金から競売費用を控除した残額を次のとおり分配する。
  ア 申立人 4分の3
  イ 相手方 4分の1」

 裁判所から「競売」を命じる審判が出た後、競売手続が勝手に進むということではなく、相続人が裁判所に競売を申し立てて換価の手続を進めるということになります。この場合の競売は、担保権実行の例によることとされています(民事執行法195条:形式的競売)。

 なお、終局審判としての換価分割は、当事者全員が競売による換価を希望する場合や、現物分割、代償分割のいずれも相当でないが、当事者間の利害対立や不信感から任意売却もできず、かといって共有とする分割も適当ではないと考えられる場合などに命じられることが考えられます。例えば、大阪高決平成29年12月22日判タ1456号69頁は、当事者それぞれが「代償金の支払いが困難であるので換価分割の方法もやむを得ない」「換価分割により金銭を取得することを希望している」という意見を述べている事案で、不動産についての「現物分割」が可能かどうかの検討を行った上で、「換価分割の方法によらざるを得ない」として、換価分割を命じる判断をしています。

3 中間処分としての換価を命ずる裁判

 「中間処分としての換価を命ずる裁判」については、次々回のコラムで取り扱います(次回は、「終局処分としての換価分割」による競売手続において、引き続き当該不動産への居住を希望する相続人が当該不動産を取得することができるかどうかという点を取り扱う予定です。)。

弁護士: 相良 遼