受遺者による公正証書遺言の検索

遺産分割・遺留分

1 はじめに

公証役場で作成された公正証書遺言は、遺言者の死後、「利害関係人」であれば任意の公証役場で検索をすることができます。この「利害関係人」の典型例は法定相続人ですが、本コラムでは、法定相続人ではない「受遺者」による公正証書遺言の検索方法について取り上げます。

なお、以下の説明は、ある過去の事案における一例を紹介するものに留まり、また、公証役場や公証人によって必ずしも統一的な対応がなされるとは限られないため、具体的な事案においては、個別に弁護士に相談することを推奨いたします。

2 法定相続人ではない受遺者の「利害関係人」該当性

公正証書に受遺者として明記されている者については、法定相続人でなくとも「利害関係人」であるとして、公正証書遺言の検索を行うことが可能です。公正証書遺言の検索に際して、自身が受遺者であることを証する資料を提出することができれば、問題なく公正証書遺言を検索できる可能性が高いものと思われます。

もっとも、公正証書を検索する必要がある場面では、検索者において、自らが受遺者であることを証明する資料を有しない場合も少なくはありません。この場合、客観的資料がある場合に比して、遺言検索を求めることは難航しますが、代理人弁護士に依頼するなどして、公証人と交渉をすることで、客観的資料がなくとも遺言検索が認められる場合があります。

3 法定相続人ではない受遺者による遺言検索の手続

※以下では、いずれも受遺者本人ではなく、代理人弁護士による手続きを前提としております。

(1)公正証書遺言が作成された公証役場が判明している場合

公正証書遺言が作成された公証役場において、以下の必要書類を提出することで、遺言検索を行うことができます。

【必要書類】

  • 委任者の実印による捺印のある委任状
  • 委任者の印鑑登録証明書
  • 受任者の顔写真付きの公的な身分証明書
  • 遺言者の死亡の記載がなされた除籍謄本

(2)公正証書遺言が作成された公証役場が不明な場合

任意の公証役場において、(1)と同様の必要書類を提出することで、遺言検索を行うことができます。公正証書遺言が存在しない場合や、存在していても検索者が受遺者である旨明記されていない場合は、検索結果の開示を受けることはできません。

検索者が受遺者である旨明記された公正証書遺言が存在する場合、当該遺言が作成された公証役場の情報が提供されます。情報提供後の手続は(1)と同様です。

 

弁護士: 土井將