推定相続人からの廃除の具体的な基準

遺産分割・遺留分

1 はじめに

 家族の中には、折り合いが悪い方・嫌味を言ってくる方・疎遠だったのに相続のときには権利を主張してくる方等が少なからずいるものです。
 そういった家族には相続をさせたくないと思うものです。
 しかしながら、遺言を作成していない場合は、そういった方にも相続権が発生しますし、遺言を作成していたとしても遺留分という権利が発生します。

 推定相続人の廃除の要件については、こちらのページをごらんください。

 

2 具体的な廃除原因の基準

 伝統的な学説によると、虐待、侮辱、著しい非行などの廃除原因とは、「相続的共同関係または家族的共同生活を破壊する程度のものであることを要する」としていますが、まだこれでは、どういった場合に廃除が認められるか明らかではありません。

 この基準をもう少し具体的に示した判例として、東京高裁平成4年12月11日決定があります。
 同決定では、「民法第892条にいう虐待又は重大な侮辱は、被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を毀損する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との家族的協同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめるものをも含むものと解すべき」と判示しました。

 同決定は、廃除原因を「被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を毀損する行為」と示し、基準を具体化しました。
 同決定の事案は、推定相続人たる娘が保護処分歴を重ねたうえ、暴力団員と婚姻し、父母がこれに反対なことを知りながら父の名で披露宴の招待状を作成して、父母の知人等にも送付するなどの一連の行為を、「被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を毀損する行為」と認定し、相続人からの廃除を認めたものです。

 

3 おわりに

 以上のように、「被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を毀損する行為」をしているご家族がいる場合、廃除をすることができます。
 「被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を毀損する行為」にあたるか否かは事情によりますので、専門家に意見を効くことが重要です。
 ご家族が被相続人に対し精神的苦痛を与えられ又はその名誉を毀損されていると感じる場合には、一度当事務所に相談ください。

弁護士: 森下 裕